十勝に月1くらいで通うようになって、帯広駅前の信号待ちが少し好きになった。
普通、信号待ちは退屈なものだ。
車の音と、たまに通る人の足音くらいしかない。
でも帯広駅前は、少し違う。
信号待ちをしていると、どこからか音が流れてくる。
「き〜る〜も〜の〜や♪」
最初に聞いたときは、なんだこの音はと思った。
しばらくすると、別の声が流れる。
「ちえん♪ ちえん♪」
地元の人に聞いてみると、どうやらこれは、商店街の広告らしい。
帯広の中心部には、街路のスピーカーから音楽やCMが流れる「街頭放送」がある。
ラジオではない。
街そのものが、ゆるくしゃべっている感じだ。
大阪の繁華街だと、音はもっと騒がしい。
店の呼び込み、車の音、人の声。
でも帯広の街頭放送は、もう少しゆったりしている。
信号待ちの時間に、ふっと音楽が流れてくる。
その感じが、妙にちょうどいい。
調べてみると、あの放送は「時事タイムス放送社」という会社が流しているらしい。
商店の宣伝やイベント案内、ときには行政の情報なども流れるという。
つまり、帯広の街はスピーカーで会話している。
信号待ちをしているとき、
あの音が聞こえてくると、
「ああ、帯広に来たな」
という感じがする。
観光名所ではない。
でも、あの音は帯広の人の記憶の中にある音なのだと思う。
今日も信号待ちをしていると、またあの声が流れてきた。
「き〜る〜も〜の〜や♪」
信号待ちが少し楽になる。知らんけど。

