なりさん今回の北海道旅には、ひとつテーマを足した。「居酒屋車中泊」である。車の中を小さな居酒屋に見立てて、道の駅と温泉を渡り歩きながら飲んで寝る。ちゃんと仕事もする。その初日の記録。
2025年秋の北海道車中泊の旅(Part16)初日:2025/10/06
関西の夜明け前、星空を見上げてスタート
朝4時半起床。天気予報では、旅の途中に最低気温2度予想の日もある。
そこで今回は、最初から「冬の本気装備」を意識した。スパッツとカイロをバッグに放り込み、服装はTシャツにユニクロのパッカブルジャケット、そしてネイビーのバラクータのG9ハリントンジャケット。
4時55分、アトレーで兵庫県西宮の自宅を出発。まだ真っ暗な街を抜けて高速の入口に向かう途中で、モバイルバッテリーを忘れたことに気づく。
「うわ、戻らなアカンやん…」
と、軽く心の中でツッコミを入れつつUターン。
ただ、そのおかげで一つ得をした。家の近くでふと空を見上げると、オリオン座のベルトがはっきり見えるくらいの星空だった。
「なんや、めちゃくちゃええ出発日やん」
そう思った瞬間、眠気よりも旅の高揚感のほうが勝ち始める。
6時前、関空第2ターミナルに駐車。6時55分、北海道に向けて離陸。
1年半で16回目の北海道ともなると、機内の過ごし方にもパターンができてくる。
以前は、ドラマをダウンロードして観たり、Kindleで本を読んだり、音楽を聴いたりと「移動時間を何かで埋める」ことに必死だった。
今回はイヤホンを忘れたこともあり、2時間のフライトを「少しの睡眠と、ひたすら思考の時間」にあてることにした。
窓の外の雲海をぼんやり眺めながら、
「居酒屋車中泊、どんな酒と食材で楽しもうか」
「どの街で誰に会おうか」
そんなことを考えているうちに、すでに旅は始まっている感覚になってくる。
大河原パーキングで、いきなり心拍数が上がる
8時25分、新千歳空港に着陸。8時45分に大河原パーキングへ電話し、9時5分に到着。
ここで、早速この旅最初のイベントがやってくる。
エンジンをかけようとキーを回した瞬間、セルの回りが明らかに弱い。
「うわ、これアカンやつちゃうん…?」
心の中で一気に目が覚める。
8秒ほどセルを回し、アクセルを踏み込むと、3回目になんとかエンジンがかかってくれる。ほっとした瞬間、さっきまでの「旅情」よりも、「現実のメンテナンス」が一気に前に出てくる。
スタッフに事情を話すと、「もしバッテリーが上がってもジャンプスタートできますよ」とのこと。
「それ聞いてだいぶ安心したわ…」
北海道の冬でバッテリーに不安を抱えたまま走るのは、さすがにスリルが過ぎる。
ひとまず心拍数を落ち着かせて、ここから十勝方面へ向かう。スタート地点でメーター86.6km。ようやくこの旅の「本編」が始まった感覚になる。
十勝に入る感覚:空の高さと匂い
日高方面へ向かう国道を進んでいくと、山の切れ間から空が一気に広くなる地点がある。
「ここから先は、十勝の空やな」と勝手に決めているラインだ。
信号の間隔が少しずつ伸びていき、窓を少し開けると、冷たい空気の中にうっすらと土と草の匂いが混ざってくる。アスファルトの都会から、少しずつ土のある北海道に「チャンネルが変わる」感じがする。
セイコーマートで、今夜の「居酒屋の仕入れ」
その途中、最初の寄り道はセイコーマートだ。
ここはもはや、旅人にとっては「ライフライン兼テーマパーク」のような存在である。
- コーヒー
- 十勝のカマンベールチーズ
- ホタテ貝柱入りかまぼこ
- ウニ入りかまぼこ
などをカゴに入れていく。さらに、今夜の「居酒屋車中泊」に備えてトリスのミニボトルも購入。
「これだけ揃ったら、とりあえず一軒は開店できるな」
車の中が、だんだん「移動手段」から「移動式カウンター席」に変わっていく感じが楽しい。
道の駅 樹海ロード日高:Wi-Fiと「さけるチーズ」とほたてみみ
11時半、「道の駅 樹海ロード日高」に到着。広い駐車場と大きな建物。旅の途中でこういう場所を見つけると、それだけでちょっと安心する。
ここで一休みしながらWi-Fiの回線速度を測ってみると、下り75.7Mbps、上り48.3Mbps。
「いやいや、これ都会のカフェでも負けるとこあるやろ…」
と思わず苦笑いしてしまう数字である。
売店では、日高昆布入りの「ストリング日高さけるチーズ」と、ドライブ用のおやつに「ほたてみみ」を購入。どちらも、夜の居酒屋車中泊で主役級のメンバーになる予定だ。
このときの気温は、天気が良いこともあって、窓を閉めて走ると少し暑いくらいだった。
「これで明後日、最低気温5度になるんか…」
同じ十勝でも、数日単位で季節がひとつ動くような感覚がある。
オートバックス帯広21条店で、現実と向き合う
13時40分、帯広市内のオートバックス帯広21条店に到着。
さっきのバッテリートラブルを受けて、ここでいったん足回りとバッテリーの状態をしっかり見てもらうことにした。
結果はかなり容赦ない。
バッテリーは寿命、タイヤも溝がほとんどなく、硬さも「赤」判定。
「どっちも交換が必要ですね」と告げられる。
「そらそうやんなあ…」
と自分でもわかっていた答えをあらためて突きつけられた気分になる。見積もりは54,300円。旅の予算的には、なかなかしたたかな一撃だ。
ただ、冬の北海道でバッテリーとタイヤに不安を抱えたまま走るのは、ちょっとした「命がけの節約」である。ここは迷わず交換を決める。気持ちを切り替えて、14時半からの作業まで周辺を散策することにした。
売鮮市場テキサスで、海鮮パワーをチャージ
近くを歩いていると、「売鮮市場テキサス」という、なかなかパンチのある名前の店が目に入る。外観からして少しローカルで、いい意味で観光客向けではない雰囲気だ。
店内に入ると、有頭海老刺身、ヤリイカ、ボイルたこが並んでいる。
気がつけば、手には「有頭海老刺身・ヤリイカ・ボイルたこ・わさびと醤油」のセットを抱えていた。お値段1,940円。
「いや、これで2000円切るんか。そら買うやろ」
と、半分言い訳しながら会計を済ませる。
こういう「その場でしか出会えない食材」を、旅の途中でちょっとだけ興奮して買うのが楽しい。
作業完了の連絡を受けてオートバックスに戻り、帯広の拠点に向かった。


帯広の拠点づくり:寒さと仕事に備える
15時10分、帯広の部屋に到着。
ここは「旅の拠点兼、車中泊サポート基地」である。
ポータブル電源と電気湯たんぽを持ち込み、エアマットの下にダンボールを敷く。床からの冷気を少しでも遮断するための小さな工夫だが、10月の北海道では、この「ひと手間」が夜中の快適さに直結する。
「ここまでやっといたら、さすがに凍えはせえへんやろ」
と自分に言い聞かせつつ、15時30分には再び外へ。ガソリンスタンドで給油し、ユニクロへ向かう。燃費はリッター16km。
そこでは、最低気温2度対策として、エアマットと寝袋の間に挟む用のフリースジャケットを2,990円で購入。
さらに隣のフクハラで飲み物を調達し、帯広畜産大学の応援も兼ねて「畜大酒」(2,400円)を一本。これも、今夜以降の居酒屋車中泊に欠かせないメンバーになる。
道の駅おとふけ:Wi-Fi付きの「移動オフィス」
16時30分、「道の駅 おとふけ」に到着。
敷地内の「Fuji」で鬼麺スーパーのブロッコリー麺(900円)を注文し、Wi-Fiの速度をチェックしてみると、下り228.2Mbps、上り128Mbpsという数字が出た。
十分な速度ではないか。
17時からコーヒーを3杯いただきながら、ここでノマド作業を開始。旅の途中でも、こうして「腰を落ち着けて働ける場所」を見つけられると、旅と仕事がいいバランスで溶け合ってくる。
鳳乃舞で温まり、夜の居酒屋車中泊に備える
19時に道の駅を出て、温泉「鳳乃舞」へ向かう。
駐車場で動画編集をし、20時にクライアントさんのYouTubeにアップ。その後、温泉に浸かり、20時50分に風呂を出て休憩する。
この日の夜から明け方にかけて、気温は5度前後まで下がるという予報が出ている。
だからこそ、風呂で一度しっかり温まり、そのまま車に戻るというルートが大事になる。
21時20分、温泉を出発し、再び道の駅おとふけへ。ここからが、今日のもう一つの本番、「居酒屋車中泊」初日の時間になる。
居酒屋車中泊、最初の一晩
セイコーマートで仕入れたチーズとかまぼこ、日高昆布入りのさけるチーズ、畜大酒、トリスのミニボトル。
満充電のLEDランタンを点けると、ほんのりオレンジがかった光がエアマットと寝袋を照らす。
まずはトリスのミニボトルを手に取る。カチッ、とキャップを開ける音が、やけに大げさに響く。炭酸水をコップに注ぎ、そこにトリスをとくとくと落とす。泡が一瞬だけざわっと立って、すぐに落ち着く。
「はい、開店」
誰もいない車内で、小さくそうつぶやいてグラスを口に運ぶ。
― ああ、このジャンクな香り。高級でもなんでもないけど、「移動式の居酒屋」には、これくらいがちょうどいい。
さけるチーズを指で割くと、きゅっ、と小さく抵抗する感触が指先に残る。そのまま口に放り込めば、チーズの塩気とコンビニスナックの脂、そこに畜大酒の香りが重なって、狭い車内が一気に「一人専用カウンター」に変わる。
「いや、これもう下手な居酒屋より落ち着くな」
と、思わずニヤッとしてしまう。
「車の中を、自分だけの居酒屋に変えてしまう」というこの遊びは、想像以上にしっくりきた。


10月6日のまとめ:整備と仕込みの一日
あらためて振り返ると、10月6日は派手な観光地を回った日ではない。
むしろ、これからの数日間を安心して楽しむための「下ごしらえの日」だった。
- 大河原パーキングで、バッテリーの危うさに肝を冷やし
- オートバックスでバッテリーとタイヤを一新し
- 帯広の拠点を整え
- 道の駅おとふけと鳳乃舞で、「仕事・風呂・Wi-Fi」が揃った生活拠点を確保し
- そして最後に、居酒屋車中泊という新しい旅のスタイルを、本格的にスタートさせた そういう一日である。
明日以降は、気温もさらに下がり、鹿追や屈足、十勝の夜の店や、日勝峠の景色が待っている。
その前にこの日があったおかげで、旅全体のクオリティが一段階底上げされた感覚がある。
「よし、これで心置きなく飲んで走って書けるな」 そう静かに思えた2025年の10月6日だった。
