なりさん雨の朝、鹿追から帯広へ。ジンギスカン、道の駅なかさつないの「むにゅむにゅ小肉串」、そしてやよい乃湯で4時間のノマド温泉ワーク。
働く旅人の北海道3日目、温泉がオフィスになった一日の記録。
2025年秋の北海道車中泊の旅(Part16)3日目:2025/10/08
——「え、ここ日常? いや、ちょっと旅のボーナスステージちゃう?」の巻
7時20分、雨音を聞きながら道の駅しかおいで目を覚ます。
フロントガラスについた水滴が流れていくのをぼんやり眺めていると、「今日は移動少なめ、整える日やな」という空気が、車内にじんわりと広がっていく。
7時36分、セブン-イレブンでコーヒーを一杯。
苫小牧方面では「記録的な大雨」というニュースがスマホに流れてくるのに、帯広の空は拍子抜けするくらいの快晴だ。
「同じ北海道とは思えんな……いや、広すぎるだけか」
そんなことを考えながら、9時前には帯広の拠点へ。
ここからは、旅人というよりも“現地在住フリーランス”モード。重いデータをダウンロードして、YouTube にアップロードする地味な作業が続く。車中泊とは思えないくらい、パソコンと睨めっこしている時間が長い。
10時40分、鳳乃舞へ移動。
洗濯機を回しながら、合間に仕事。湯けむりとWi-Fiと洗濯機。だんだん「ここで暮らせるんちゃうか」という錯覚が強まってくる。
昼が近づくころ、外に出ると、空はもう完全に“夏の終わりの快晴”になっていた。
ニュースの中の「記録的な大雨」と、目の前の青空のギャップに、少しだけ現実感がずれる。
「同じ時間に、どこかでは土砂降りで、ここでは日焼けしそうなんやもんなあ」
そんなことを思いながら、12時23分に鳳乃舞を出発。
向かうのは、今日のメインイベント「じんぎすかん北海道」だ。
じんぎすかん北海道で、昼から全力の肉時間
13時ちょうど、「じんぎすかん北海道」に到着。
煙の向こうから漂ってくる、あの独特のタレと脂の香り。座った瞬間、胃袋が条件反射でスタンバイする。
焼き台の上で、じんぎすかんがジュウジュウと音を立てはじめる。
タレが焦げる手前の香りと、羊肉の脂が野菜に染みていく匂い。
「昼からこれは反則やろ……いや、旅のときぐらいええか」
そう自分に言い訳しながら、白いご飯を遠慮なくおかわりする。
旅先で食べる“いつもよりちょっと贅沢な昼ごはん”は、それだけで一日の軸になる。
お会計は二人で5000円。
財布の中身は確実に軽くなるのに、気持ちのほうは逆にずっしり満たされていくのが不思議だ。
ローソンのWi-Fiと、地味だけど欠かせないオンライン仕事
昼食後はツルハドラッグで洗剤などを買い出しして、14時10分に出発。
その足でローソンに寄り、コーヒーを片手に再び“ノマドワークモード”へ。
クライアントさんのメール容量がパンパンになりつつあったので、設定変更の対応。
ローソンのフリーWi-Fiにつなげてみると、これが意外と快適で、コンビニの駐車場が一瞬だけ自分専用の「サテライトオフィス」に変わる。
「いやあ、日本どこでも仕事できるようになったなあ……ええんか悪いんか知らんけど」
そうつぶやきたくなるような、ありがたくも不思議な時代だ。
14時30分、再びエンジンをかけて、中札内の「道の駅なかさつない」へ向かう。
中札内・サルバトーレ12で“むにゅむにゅ”を噛みしめる
15時、道の駅なかさつないに到着。
インフォメーションでレンタサイクル「ピーチャリ」の案内を見つける。
電動自転車2時間200円、普通自転車4時間200円。
こういうローカルな“足”情報を見るたびに、「次は自転車を軸にした旅もええな」と妄想が膨らむ。
今回のお目当ては、息子に勧められていた「サルバトーレ12」の小肉串。
一口噛むと、むにゅむにゅとした独特の食感が舌の上で跳ねる。
「なんやこれ……むにゅむにゅのクセに、ちゃんと肉やん。ずるいわ」
ビールが欲しくなるのを、運転が控えている理性でなんとか押しとどめる。
代わりに手にしたのは、ホエイチーズサイダー。
これがまた、小肉串の脂をすっと流してくれる、不思議な相棒だった。
少し仮眠を挟んで、16時半。
再びサルバトーレ12に戻り、今度は“お土産モード”に切り替える。
チキンチーズバーガー2個、小肉の串揚げ6本、枝豆コロッケ2個。合計1840円。
どれも「今ここで食べたい」ラインナップだが、そこをぐっと堪えて息子へのお土産にする。
道の駅の前には、マックスバリュとサツドラと100円ショップ「生活良品館」。
暮らしに必要なものは、だいたい半径数百メートルで揃ってしまう。
芝生エリアでは、レジャーシートの無料貸し出しもあって、家族連れが思い思いにくつろいでいる。
「ここ、普通に“暮らせるインフラ”整ってるやん……なんか、ちょうどええ」
旅人として来ているはずなのに、「ここに数週間単位で滞在する」というオプションが、現実味を帯びて頭の中に浮かんでくる。
やよい乃湯で、“旅先のホーム”を見つけてしまったかもしれない
16時40分、道の駅を出て、息子の部屋にハンバーガーとコロッケと小肉串揚げを置き配。
「また一緒にどこか行けたらええな」と思いつつ、17時35分、「やよい乃湯」に到着する。
受付で迎えてくれたスタッフの子が、有村架純さんのような柔らかい雰囲気で、いきなり心のガードが2枚くらいはがれる。
館内に入ると、サウナも広く、低温サウナもあって、露天風呂もゆったりとした造りだ。
湯に浸かりながら空を見上げると、さっきまで車の運転と仕事でカチコチだった頭の中が、少しずつほどけていく。
「こういう温泉が、拠点から5kmのところにあってんのに、今までスルーしてたんか俺……」
思わず心の中でツッコんでしまう。
18時半、烏龍茶(250円)をオーダーして、和室の休憩所でノマドワーク再開。
小さな椅子が用意されていて、胡座をかかなくても作業ができる。
この“ちょっとした椅子一脚”が、腰と集中力にとってどれだけありがたいか、旅に出るとよくわかる。
フリーWi-Fiの回線速度は、下り28.2mbps、上り3.65mbps。
爆速ではないが、画像のダウンロードとアップロードには十分。
今回の旅の画像をまとめてダウンロードし、縮小して、ALT とキャプションを登録していく。
気づけば、約4時間近くここで過ごしていた。
バッテリー残量は92%から30%へ。
画像加工は3時間で約140枚。
「1時間で50枚弱か……」と、なんとなく自分の“旅の制作ペース”まで見えてくる。
「風呂入って、仕事して、またちょっと湯に浸かって……なんやここ、第二の事務所兼オアシスやん」
そう思った瞬間、「旅先のホーム」をひとつ見つけてしまったような感覚があった。
夜は再び、道の駅おとふけの“居酒屋車中泊”へ
21時25分、やよい乃湯を後にする。
外に出ると、夜の空気はすっかり冷えているのに、身体の芯にはまだ温泉の熱が残っている。
「拠点から5kmほどのところに、こんな場所があったのに今まで見過ごしてたとはなあ……」
苦笑しながら車を走らせ、途中セイコーマートでビールを調達。
22時、道の駅おとふけで、恒例になりつつある“居酒屋車中泊”がスタートする。
テーブル代わりのボードには、小肉串3本、枝豆コロッケ、チキンチーズバーガー、鮭フライ、目玉焼き。
そして、ご飯と、鹿追のそば屋で仕入れたにんにく南蛮味噌。
「いや、ラインナップどう見ても家飲みの“ごちそう日”やん。ここ駐車場やけどな」
ビールを一口。
小肉串をひとかじり。
枝豆コロッケをつまんでから、目玉焼きの黄身を崩し、その上に南蛮味噌を少しだけのせてみる。
「うわ、これアカンやつや……うますぎて“車中泊”ってこと忘れるレベルやん」
思わず関西弁が口からこぼれる。
道の駅の外は静かだが、車内だけはちいさな居酒屋のカウンターのように賑やかだ。


“暮らすように旅する”って、こういう一日かもしれない
こうして振り返ると、10月8日は観光名所をまわったわけでも、大きなイベントがあったわけでもない。
帯広の拠点でデータをいじり、ローソンでWi-Fiを借り、
中札内で息子へのお土産を選び、
やよい乃湯で仕事と湯を行ったり来たりし、
最後は道の駅おとふけで、車内の小さなテーブルを囲んで一人宴会。
「旅」というよりも、「もうここに住んでる人の一日」に近い。
でも、だからこそ胸のどこかが静かに動いていた。
「観光地を制覇する旅」でもなく、
「映える写真を量産する旅」でもなく、
その土地のスーパーで買い物をして、
地元の温泉で仕事をして、
道の駅の駐車場で一日の終わりをゆっくり飲み込みながら眠る。
「こういうのも含めて、“暮らすように旅する”ってやつなんやろな」
そうつぶやきながらシートを倒す。
外は静かで暗い北海道の夜。
車の中だけが、ほんのり明るくて温かい、自分だけの小さな居酒屋兼寝室だ。
ほな、また明日。
