【北海道#16-5】北海道で「はなてん中古車センター」を歌うとは——帯広・元力士のちゃんこと夜の5番館

夜の帯広駅北側に建つ5番館の外観。ネオン看板が連なり、スナックや飲食店が入る帯広のランドマーク的なビルがライトアップされている。
なりさん

洗濯と冬支度から始まった北海道4日目。くったり温泉レイクインで温泉とノマドワークを両立し、カムイロキの絶壁に立ち、夜は道の駅で静かな居酒屋車中泊。

2025年秋の北海道車中泊の旅(Part16)5日目:2025/10/10

凍ったフロントガラスと、十勝の朝日

5時20分、道の駅しかおいの車内で目が覚める。

「さぶっ……」

フロントガラスが凍りついている。結露もびっしりだ。エンジンをかけても、視界がクリアになるまでしばらく時間がかかる。喉も少し痛い。昨夜の居酒屋車中泊が楽しすぎたツケが、朝イチの喉に来ている。

5時40分、鹿追から帯広の拠点へ向かう道中、冷たく澄んだ空気の中から朝日が差し込んでくる。十勝平野の空は広く、光の粒子がゆっくりと大地を照らしていく様子が、運転席から一望できる。旅の途中で見る朝日というのは、どうしてこんなにも特別に見えるのだろう。

6時55分、帯広の拠点に到着。まずは洗濯機を回して、7時半にはラフルールで乾燥機にかける。今回の旅ですっかり定番ルーティンになった。拠点で一仕事を片付けて、9時半に再出発。

9時45分、DCMでハイゼットカーゴのバッテリーのマイナス端子を外すためのレンチを購入する。実際に端子を外してみると、サビだらけだった。拠点に戻ってナットを磨く。

「うわ、めっちゃ気持ちええやん、これ」

サビが落ちていく感覚が、妙に爽快だ。旅の途中で車のメンテナンスをしているという行為が、なんだか「暮らすように旅する」ことの象徴のように思えてくる。

11時50分、ダイイチでとろサーモン丼と甘エビ丼を購入して休憩所で食べる。

やよい乃湯、気持ちの安定はどこへ行った

12時半、今回の旅で見つけた新たなノマドスペース、やよい乃湯に到着する。いい天気の露天風呂は最高だ。今日はサウナではなく、低温よもぎスチーム風呂に入ってみる。効用の説明を読むと、「傷口の治癒」や「気持ちの安定」と書いてある。

「ほう、気持ちの安定か。ええやん」

そう思いながらスチーム風呂に入っていると、隣で誰かが喧嘩を始めた。気持ちの安定、どこいった。

13時半に温泉を出て、隣のビッグイオンに入る。トンカツ関係がやたらと安い。買って帰りたい衝動に駆られるが、これから豚丼を食べる予定があるので我慢する。次回、やよい乃湯に来たときの楽しみにしておこう。

とん田の豚丼、腹いっぱいになるまで

13時55分、息子推薦の店「とん田」に到着。昨日よりも駐車場の車が多い。誘導されて車を停め、名前を書いて、また車で待機する。15分ほどで入店。

ご飯大盛りにして、タレをつぎ足して食べたら、腹がはちきれそうになった。柔らかいバラ肉6枚と、豚丼らしいロース4枚が交互に攻めてくる。

「うまいわ……さすが息子の推薦や」

14時半に店を出ると、その頃には車の待機はなくなっていた。ピーク時が過ぎたようだ。次回は14時半以降が狙い目かもしれない。

15時からタイヤ館西帯広店でCTのタイヤを冬用に交換。オイル交換もしてもらう。17時に終了。拠点に車を停めて、ハイゼットに乗り換える。

繁華街の外れで出会った、元力士のちゃんこ

18時半、帯広駅から400mほどの場所にあるnorte park駐車場に停める。隣のさかえ公園にはトイレもあり、西3南9交差点のローソンもある。街中車中泊の条件にぴったりだ。

駅前の繁華街に向かう。帯広駅前に来るのは1月以来か。駅中のお土産屋さんで十勝をモチーフにした緑のTシャツと、シマエナガと北海道柄のランドリーバッグを購入。荷物になるので、一度駐車場まで持っていく。このときに簾と収納していたソロテントの場所を交換する。これで居酒屋車中泊の画像も見栄えが変わるだろう。

19時45分、CHANKO長に到着。北の屋台村などのど真ん中の店に行くよりも、なぜか繁華街の外れのこの店に惹かれた。

店に入ると、メニューよりも地下一階の「リート」というガールズバー推しが目立つ。違和感しかない。厨房とカウンター内にはガタイのいい坊主のおっちゃん。ホールはショートカットのメガネのお姉さん。

まずはセンベロで様子見。グラスビール2杯とポテサラ、出汁巻き、マグロユッケ。居心地がよかったので、黒霧お湯割りと本ししゃもと1杯ちゃんこをオーダー。

メニューの裏を何気なく見ると、元北勝司と北勝洋がやっている店だと書いてある。

「おお、元力士の店やったんか!」

本ししゃもは5匹と書いてあるのに、7本も出てきた。わざわざホールの子ではなく、オーナー自らが「サービスです」と持ってきてくれた。しめて2900円。

お勘定のときに、ガールズバーとの関係を尋ねたら、案の定同じオーナーだった。

5番館という帯広のランドマーク

21時、系列店のガールズバー「リート」に行く。CHANKO屋から来たと伝えたら1000円割引、22時前に来たら1000円割引。合計2000円の割引で、1500円スタート。

あまりにも申し訳ないので、そらちゃんにビール2杯をご馳走する。帯広開拓の祖、依田勉三の話を熱く語ってしまう。同じ年くらいのお客さん、わたるさんから帯広駅界隈の事情を聞き、5番館のスナック「人・Jin(じんじん)」を紹介してもらう。5番館というのは、帯広のランドマーク的なビルらしい。

22時15分、紹介してもらったスナック人・Jinへ。

「ええ店やなあ」

音更のちひろちゃんと北海道一周の話などで盛り上がる。彼女は道の駅のガチャで道の駅ピンを集めるのにはまっているらしい。高橋まんじゅうのおやきがうまいと紹介してもらう。てんとう虫がかわいいと話したら、意味がわからんと言われた。

「てんとう虫、こっちでは人気ないんか」

そして、北海道ではゴキブリがいないという話になる。確かに、見たことがない。

北海道で大阪のCMソングを口ずさむ夜

やがて、同業の年配の小柄なママが来店する。切れのいいおしゃれな女性だ。みのる宝石で働いていた話や、大阪門真市に10年住んでいた話を聞く。大阪のことをよく知っている。そこから京橋の話になり、しまいには放出中古車センターのCMの歌まで一緒に口ずさんで歌う。

「♪はなてん 中古車センター♪」

「まさか北海道で放出の歌を歌うとは思わんかったわ」

心の中でそうつぶやく。北海道の他のお客さんは、きっとワケがわからなかっただろう。

0時40分に店を出る。焼酎ボトルを入れて、4人にご馳走して1万円。

らーめんどーもで豚骨赤味噌ラーメンを食べる。ここの壁に書いてある言葉が沁みる。夫婦2人だけで頑張ってきて34年だそうだ。

繁華街の外れの店から始まって、図らずも最後は帯広のメイン1丁目1番地の5番館の店に行くという流れ。この日の帯広の夜は、思いがけない軌道を描いていた。

帰りにローソンで生クリーム菓子を購入。1時40分、車に戻って寝床につく。

外は静かだが、胸の内側では、元力士のちゃんこと、5番館のカウンター越しに聞いた大阪の話と、放出中古車センターの歌が、まだざわざわと騒いでいる。

こうして、帯広で迎えた北海道5日目、2025年10月10日の夜は、更けていくのである。

ほな、また明日。

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