道の駅おとふけ居酒屋車中泊
2025年10月8日21時25分、やよい乃湯の駐車場を出る。
体の芯には、さっきまで浸かっていた露天風呂と低温サウナのぬくもりが、まだじんわりと残っている。休憩室で4時間もノマドワークしていたせいか、頭は冴えているのに、体はほどよく脱力している。
「さて。今夜も店に向かうか。」
店といっても、もちろん自分の車だ。
セイコーマートに立ち寄り、ビールを数本調達する。助手席には、昼間に道の駅なかさつないのサルバトーレ12で仕入れた”食材”が袋に入っている。
ハンドルを握りながら、頭の中で今夜のメニューを確認する。
―― 小肉串3本
―― 枝豆コロッケ
―― チキンチーズバーガー
―― 鮭フライのり弁当
―― にんにく入り南蛮味噌(鹿追のクックカルテンで仕入れた秘密兵器)
(息子推薦の小肉串、あの”むにゅむにゅ”がどうビールと絡むか……楽しみやな)
22時、道の駅おとふけに到着する。
車中泊スペース、ちゃんとありました
初日、「車中泊スペースここか?」と勘違いしていた場所を通り過ぎ、今夜はちゃんとした車中泊専用スペースに停める。
「初日の俺、なに見てたんやろな……」
看板。区画。照明の位置。すべてちゃんと整備されている。
(まあ、初日は初日で、それはそれで楽しかったけど)
エンジンを切ると、急に世界が静かになる。
フロントガラス越しに見えるのは、ほの暗い駐車場の灯りと、その向こうの広い空。
「さて、開店準備しますか。」
開店準備:車内がカウンターになる瞬間
まずは荷台に移って、テーブルがわりのクーラーボックスを「飲みやすいポジション」に調整する。
ポータブル電源をセット。天井から吊るしたLEDライトが、ほんのり暖色で車内を照らす。
さっきまで、ただの移動手段だった空間が、一気に「一人飲みのカウンター」に変わる。この瞬間が好きだ。
袋から今夜の役者たちを取り出して並べる。
・小肉串3本(息子推薦、サルバトーレ12)
・枝豆コロッケ(同じく)
・チキンチーズバーガー(同じく)
・鮭フライのり弁当
・にんにく入り南蛮味噌
そして、
・セイコーマートのビール各種
(よし。今夜もいける。)
ただし、ここで一つの謎が発生する。
初日に買ったウニちくわとホタテちくわが、見当たらない。
「……どこいったんや?」
クーラーボックスの中を確認する。ない。
荷台の隅々まで探す。ない。
(まあ、ええか。今日のラインナップでも十分すぎるし)
謎は謎のまま、棚上げにすることにした。
一杯目:ビールと小肉串の「むにゅむにゅ」
まずは缶ビールをプシュッと開ける。
「はい、開店」
誰もいない車内で、小さくそうつぶやいてビールを一口。
―― ああ、やっぱり一杯目はビールやな。
4時間の温泉ノマドワークで消耗したエネルギーが、一気に補給される感覚。
つまみの一番手は、満を持して小肉串。
昼間、息子が勧めてくれた「むにゅむにゅの食感」というのが、ずっと気になっていた。
一口かじる。
「むにゅむにゅ……ほんまや」
この独特の食感。説明しづらいけど、やみつきになる。
ビールを、もう一口。
串をもう一本。
(これは、ビールが止まらんやつや……)
回想:なかさつないサルバトーレ12での「仕入れ」
ふと、昼間の道の駅なかさつないの光景が浮かぶ。
息子に勧められたから、わざわざここまで来た。「むにゅむにゅの食感がたまらん」という推薦文を頼りに。
サルバトーレ12のカウンターで小肉串を注文し、その場で一本食べた。
「なんや、これ……クセになるやん」
ビールが欲しかったけど、まだ運転があるのでホエイチーズサイダーで我慢した。
そして、「これは夜にビールと合わせたい」と思い、追加で6本購入した。
チキンチーズバーガーと枝豆コロッケも、「息子へのお土産」という名目で買ったけど、正直、自分も食べたかった。
(あの瞬間から、今夜の居酒屋車中泊は始まってたんやな)
二杯目:チキンチーズバーガーと枝豆コロッケの共演
小肉串3本を平らげたところで、ビールの二本目を開ける。
次の役者は、チキンチーズバーガー。
「息子に持ってくつもりやったのに、結局自分が食べてるやん」
そうツッコミを入れながら、一口。
―― うまい。
チキンとチーズの組み合わせに、ビールが合わないわけがない。
続いて枝豆コロッケ。
衣はサクッとしていて、中の枝豆がほくっとしている。
「これ、ビールのためのコロッケやろ……」
二品を交互につまみながら、ビールを飲む。
駐車場のアスファルトの上に停めた軽バンの中で、自分だけの「サルバトーレ12分店」が成立してしまった。
鮭フライと目玉焼き:のり弁のツワモノたち
ビールが三本目に突入したところで、少し間を置く。
車内の空気が、さっきより少しだけ柔らかくなっている。
ここで、のり弁から分離させて鮭フライを投入。
「これ、もう完全に深夜食堂やん……」
のり弁から取り出した鮭フライを一口。
ふわっとした身に、衣のサクサク感。はあまりないが、
―― うまいに決まってる。
鹿追のクックカルテンで仕入れた南蛮味噌、目玉焼きに少しつけて辛味のアクセントを追加。汎用性が高すぎる。
静かな締め:ご飯と南蛮味噌で「帯広の夜」を終える
ビールをちびちびやりながら、外を見る。
道の駅の灯りが少し遠く感じる。
車内は、もう完全に自分だけの世界だ。
そろそろ締めに入ろう。
最後は、「白米+にんにく入り南蛮味噌」で締め。
シンプルすぎる組み合わせなのに、今日一日を通して出会ってきた土地の味が、一口ごとに全部よみがえってくる。
朝の雨。
昼のジンギスカン。
道の駅なかさつないの小肉串。
やよい乃湯の露天風呂。
(ああ、これで今日も終われるな。)
腹八分。いや、ちょっと超えてるか。
でも、車の中でこのレベルの晩酌が完結するなら、それくらいの誤差は、もはやご褒美だ。
ポータブル電源の残量をチラッと確認する。まだいける。
灯りを少し落として、シートを倒し、寝袋を肩まで引き上げる。
温泉の余韻。
アルコールのやわらかい眠気。
遠くで聞こえる、誰かのドアを閉める音。
「ウニちくわとホタテちくわ、どこいったんやろな……」
そんなどうでもいい謎を考えながら、まぶたが重くなっていく。
―― こうして、帯広郊外の道の駅で、静かに夜が更けていく。
「居酒屋車中泊、本日の営業終了。」
心の中でそう宣言して、目を閉じた。
