道の駅しかおい、居酒屋車中泊(第三話)

鹿追の道の駅での居酒屋車中泊。畜大酒と北海道のビール、つまみを並べた車内の即席カウンター。

2025年10月9日

焼肉まるよしの前まで行ったが、今日は貸し切り。そのまま道の駅に戻ると、気温計が5℃を指していた。

「さぶっ……」

息が白く、肌に刺さるような冷たさ。10月の鹿追の夜は、もう完全に冬の入口だ。

セイコーマートに滑り込む。店内の暖かさがありがたい。冷蔵ケースの前を巡りながら、今夜の「仕入れ」を考える。

―― 北海道のビール3本
―― 豚丼

カゴに入れながら、頭の中では今夜のカウンターの光景がもう浮かんでいる。

レジを出ると、空に大きな月が浮かんでいた。丸くて、綺麗で、冷たい。

「今夜もええ夜になりそうやな」

店といっても、もちろん自分の車だ。

けれど、頭の中ではもう、道の駅しかおいの一角に「居酒屋」の暖簾がかかっている。

開店準備:道の駅の片隅で

20時、車に戻って開店準備を始める。

荷台に移動して、クーラーボックスを「飲みやすいポジション」に調整する。天板はテーブル代わり。足元にはポータブル電源。天井のLEDライトを暖色に切り替えると、車内が一気に「店」になる。

コンビニ袋から、今夜のラインナップを取り出す。

・サッポロ黒ラベルエクストラシンク

・ソラチ

・小樽麦酒ピルスナー

・昆布入りストリングチーズ

・ほたてみみ

・にんにく入り南蛮味噌(鹿追のそば屋で仕入れた宝物)

・豚丼

・畜大酒

そして、クーラーボックスの中には、今日の昼間にダイイチで買った甘エビ丼の余韻がまだ残っている。

(よし。今夜もええ布陣や)

外の気温は5℃。けれど、車内はもう、自分だけの小さな酒場だ。

一杯目:黒ラベルエクストラシンクで乾杯

まずは、黒ラベルエクストラシンクのプルタブを起こす。

プシュッ。

その音が、静かな車内にやけに大きく響く。

「はい、開店」

誰もいない車内で、小さくつぶやいてグラスに注ぐ。泡が立ち、黄金色の液体がゆっくりと満ちていく。

一気に流し込む。

―― ああ、これや。

冷たいビールが喉を通り、胸の奥まで染みていく。今日一日、洗濯と冬支度とカムイロキの絶壁と温泉で過ごしてきた時間の全部が、この一杯で報われる。

間髪入れずに、昆布入りストリングチーズに手を伸ばす。

さけるチーズを一本裂いて、口に放り込む。

「これ、たまらんわ……」

昆布の旨みがじわっと広がって、ビールがまた欲しくなる。完璧な連携プレーだ。

日本酒タイム:畜大酒とビール、どっちがええ?

黒ラベルが半分ほど空いたところで、ふと畜大酒に目がいく。

(せっかくやし、日本酒も試してみるか)

紙コップに少しだけ注いで、昆布入りチーズと合わせてみる。

―― うん、悪くない。

けれど、やっぱりビールのほうが合う。この組み合わせは、ビールの勝ちだ。

「日本酒には、別の相方がおるはずや」

そう思って、次の一手を考える。

炙りタイム:ほたてみみと南蛮味噌の饗宴

ここで満を持して、ほたてみみを取り出す。

チャッカマンで軽く炙る。車内にぷわっと香ばしい匂いが広がる。

そして、鹿追のクックカルテンで仕入れた、にんにく入り南蛮味噌。あの店のお母さんとの会話を思い出しながら、炙ったほたてみみの上にちょんとのせる。

もう一度、チャッカマンで炙る。

南蛮味噌がじゅわっと溶けて、にんにくの香りが立ち上る。

畜大酒を紙コップに注いで、準備完了。

ひと口。

「……うまいに決まってるやん」

ほたての旨み、南蛮味噌の辛み、にんにくのパンチ。そこに、畜大酒を流し込む。

―― これや、これ。

日本酒はこのために取っておくべきやったんや。

ソラチと小樽麦酒:豚丼の肉だけをツマミに

畜大酒をちびちびやりながら、次はソラチを開ける。

そして、豚丼のパックを開けて、豚肉だけをつまみ皿に移す。

(ご飯は後で。今は肉だけでいこう)

柔らかいバラ肉を一切れ、箸でつまんで口に運ぶ。タレの甘辛さが、ソラチと絶妙に絡む。

小樽麦酒ピルスナーも開けて、交互に飲み比べる。

ソラチのすっきりした飲み口。

小樽麦酒の、少しだけ深みのある味わい。

豚肉を挟みながら、二つのビールを行ったり来たりする。

「北海道の夜、最高やな……」

締め:ご飯と南蛮味噌で、静かな終幕

ビールが空になって、車内の空気が少しだけ柔らかくなってきた。

外を見ると、道の駅の灯りが遠く、月が高い。

そろそろ締めに入ろう。

最後は、豚丼のご飯に、にんにく入り南蛮味噌をのせる。

シンプルすぎる組み合わせなのに、今日一日の全部がここに詰まっている。

クックカルテンのお母さんの笑顔。

カムイロキの絶壁。

くったり温泉の湯。

甘エビ丼の甘み。

そして、5℃の鹿追の夜。

ひと口、また、ひと口。

(ああ、これで今日も終われるな)

ポータブル電源の残量を確認する。まだ余裕がある。けれど、今日はここまでにしておこう。

灯りを少し落として、シートを倒し、寝袋を肩まで引き上げる。

外は静かで、冷たくて、月が綺麗だ。

車内には、ビールと日本酒と南蛮味噌の余韻が、まだふわりと漂っている。

「居酒屋車中泊、本日の営業終了」

心の中でそう宣言して、目を閉じた。

こうして、鹿追の夜は、静かに更けていくのである。

ほな、また明日。


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