ダイイチ惣菜は17時から値引き 18時半で消える|十勝の生活小ネタ

月一で通う大阪人が見た十勝の生活小ネタ集

十勝に月1くらいで通うようになってから、自分の中で、旅先を見る目が少しずつ変わってきた。

最初のころは、豚丼とか六花亭とか、いかにも十勝らしいものに目がいっていた。もちろんそれも楽しい。広い畑を見ても、空の大きさを見ても、大阪とは違うなあと素直に思う。でも何度も通っていると、だんだん興味の向く先が変わってくる。

有名な観光地よりも、地元の人が普通に使っているスーパーのほうが気になる。
この町の人は、何を食べて、どんな時間に買い物して、何をうまいと思ってるんやろう。
そういうことのほうが、だんだん面白くなってきた。

その流れで印象に残ったのが、ダイイチの惣菜売り場である。

最初はもちろん、そんな大げさな話ではなかった。夕方にふらっと入って、晩ごはんをどうしようかなと思いながら見ていただけである。でも何度か通っているうちに、あの売り場には独特の時間の流れがあることに気づいた。

だいたい17時くらいから、空気が変わる。

店員さんが値引きシールを持ち始めて、惣菜コーナーの動きが少しだけ速くなる。揚げ物、焼き魚、弁当、おかずセット。そして、ダイイチといえばの「おはぎ」のパック。
そのあたりにシールがぽんぽんと貼られていく。大阪人としては、その瞬間に本能が反応する。

あ、始まったな、と。

大阪にももちろん値引き文化はある。いや、むしろ大阪人は値引きに敏感なほうやと思う。でも大阪のスーパーは、もう少し分かりやすく熱が出ることが多い。みんな「見てますよ」「狙ってますよ」という空気が前に出やすい。

ところが十勝のダイイチは、そこが少し違う。

一見すると、みんな落ち着いている。静かで、普通に買い物しているように見える。けれど、ちゃんと見ている。そして、さりげなく速い。表情には出さへんけど、取るべきものはきっちり取っていく。あの感じが、なんとも十勝らしいなと思うのである。

ある日、17時を少し回ったころに値引きが始まったので、まだ大丈夫やろうと思って、先に他の売り場を回ったことがある。牛乳を見て、ヨーグルトを見て、北海道らしい乳製品の充実ぶりにちょっと感心して、お菓子売り場まで寄って戻ってきた。せいぜい10分か15分やったと思う。

すると、さっきまでそこそこ並んでいた惣菜が、もう薄くなっていた。

おいおい、早いな。

さらに別の日、今度は18時半ごろに行ってみた。そうしたら、もっとはっきり分かった。惣菜売り場が静かなのである。人がいないわけではない。でも、あの夕方の勝負はほぼ終わっている。主力どころはだいたい消えていて、売り場全体が「今日はもう一巡しました」という顔をしている。

この感じが面白い。

ただ値引き商品がある、という話ではない。あそこには、地元の生活リズムそのものが出ている気がする。今日はこれで済まそうか、あと一品足そうか、晩ごはんをどう組み立てるか。そういう生活者の判断が、17時から18時半くらいまでのあいだに、一気に売り場を動かしていく。

観光客向けの売り場ではなく、ちゃんと暮らしの売り場なのである。

しかもダイイチは、惣菜だけではない。
寿司の種類も妙に充実していて、売り場の前で足が止まる。
しかも値引き後に買うと、こっちが恐縮するくらい、ちゃんとしていてうまい。
こんな値段で食べてええんか、と一瞬だけ良心が痛む。
でも次の瞬間には、ありがたくカゴに入れている。
旅先で景色に感動することはあっても、寿司の値引きで感動するとは思わなかった。

ここが大事で、安いからうれしいだけではないのである。
もともと普通に戦力になる惣菜や寿司が、夕方になるとぐっと現実的な値段になってくる。だから迷う。いや、うれしいけど迷う。今ここで取るべきか、もう少し待てばさらに下がるのか。でも待っていたら消えるかもしれない。その読み合いがある。

大阪人としては、こういう場面になると頭の中に別の回路が動き始める。

今やろか。
まだいけるか。
これを先に確保するべきか。
でも、もう少し待てば下がるかもしれない。
いや、その前に誰かに持っていかれるかもしれん。

完全に観光客の顔ではない。
晩ごはんの最適解を探している生活者の顔になっている。

それで何回か通って、自分なりに分かってきた。

ダイイチ惣菜は17時から値引きで空気が変わる。
でも18時半には、もう主役はだいたいいない。

そしてそのこと自体が、十勝の暮らしのテンポを表しているようにも思える。派手に群がるわけではない。けれど、必要なものは静かに、しかし確実に選ばれていく。売り場を見ているだけで、その土地の人たちの時間感覚や判断の仕方が少し見える気がする。

知らんけど、たぶんあれは、かなり生活文化である。

大阪人としての結論を言うなら、ダイイチの夕方は、のんびりしているようで全然のんびりしていない。

静かな顔をした小さな戦場である。

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