帯広で、息子にオーダーを取りに来てもらう夜

おしゃれなベルワラの外観

十勝に月1くらいで通うようになって、もう2年以上になる。

旅先では、景色や料理や偶然の出会いが記憶に残る。
でも、ときどきそれ以上に残るのは、家族との距離感が少しだけ変わる瞬間だったりする。

2026年4月13日の夜は、そんな時間だった。

息子のバイト先へ向かう道が、少しだけ特別だった

16時53分、十勝ガーデンズホテルを出た。
歩いて、息子がバイトしているベルワラへ向かう。

緑ヶ丘公園に沿って南へ下っていく道は、夕方の空気が思ったより冷たかった。風も強くて、長Tに上着1枚は見通しが甘い。ただ、寒さに肩をすぼめポケットに手をつっこみながら店に向かう時間まで含めて、その夜の記憶になっている。

緑ヶ丘公園

17時35分に着いたが、少し早かった。
そのまま近くをぐるっとひと回りする。こういう数分の待ち時間は、知らない町だと妙に旅っぽい。ただ時間をつぶしているだけなのに、少しだけ物語の前置きみたいになる。

ベルワラに入ると、息子が店員として現れた

17時45分、ベルワラに入る。
外から見たときに息子の車が停まっていたので、もう大丈夫やなと思って入った。判断材料としてはかなり生活感があるが、こういう確認の仕方も悪くない。

ベルワラの店内

席につくと、息子がオーダーを聞きにきた。

これが少し不思議だった。
親子として会うのではなく、店員と客として向き合う。もちろん中身はいつもの息子なのだが、役割が一枚入ることで、少しだけ距離の見え方が変わる。

家で顔を合わせるのとは違って、店の中で働く姿を見ると、同じ息子でも少し遠くから見ているような気がした。大げさな話ではない。ただ、旅先でそういう場面に出会うと、ふだんは意識しない時間の流れが、少しだけ輪郭を持つ。

親子なのに、少しだけよそよそしい感じがよかった

頼んだのは、ビールとワイン。
料理はタリアッテレ。ホワイトソースに、ポルチーニ茸と生ハム、海老。さらに4種のピザも注文した。

タリアッテレ。ホワイトソースに、ポルチーニ茸と生ハム、海老
タリアッテレ。ホワイトソースに、ポルチーニ茸と生ハム、海老
ピザ

料理を楽しみながらも、どこかでずっと面白かったのは、息子が普通に店員として動いていることだった。
当たり前なのだが、親からすると、その当たり前が少し新しく見える。

変に感動的な話ではない。
むしろ、少しだけよそよそしいのがよかった。必要以上に家族感を出すわけでもなく、かといって完全に仕事だけでもない。その中間の感じが、旅先の夜にちょうどよかった。

親子なのに、店ではちゃんと店の人として立っている。
その当たり前が、なぜか少しだけ胸に残った。

店のつながりを聞いて、帯広の夜がもうひとつ近くなった

食事をしながら、オーナーさんも紹介してもらった。
こういうのも、ただ食べに行くだけではなかなか起きない。息子が働いているからこそ、店の中の空気に少しだけ入れてもらえる感じがある。

そこで聞いたのが、帯広駅前にも「ブリックス」という系列店があるという話だった。
しかも、1杯無料のドリンク券までいただいた。

それだけでも十分うれしい話なのだが、さらに驚いたのはその場所だった。
なんと、今泊まっているホテルの真ん前だったのである。

こんなことあるんやなと思う。

旅先では、遠くへ行った先で何かに出会うこともある。
でも実際には、こういう「目の前にあったのに、あとから意味がつながる偶然」のほうが、妙に記憶に残る。

見えていなかったわけではない。
ただ、まだ自分の中で物語になっていなかっただけなのだと思う。

派手ではない夜ほど、あとから残る

19時に店を出た。

寒い中を3km歩いてホテルへ戻る。
体は冷えるのに、気分はどこかあたたかい。こういう夜があるから、通う旅は面白いのだと思う。

派手な出来事ではない。
有名観光地に行ったわけでもない。
でも、息子にオーダーを取りに来てもらって、店の人を紹介してもらって、ホテルの前の店とあとからつながる。

そういう小さな出来事が重なると、その土地が少しだけ自分の近くに来る。

旅先で店に入り、息子に注文を聞かれる夜が来るとは思っていなかった。
そんな時間もまた、通う土地の中で少しずつ育ってきたのだと思う。

帯広の夜が、また少し近くなった気がした。

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