2026年冬の北海道車中泊の旅(Part18)4日目:2026/02/24
——「絶景と現実が、同じ車内に同居してる日の巻」
今日は少し遅い始動。
10時40分、理髪館ブルーに停めさせてもらってた車を動かして、次男と一緒に出発する。行き先は、然別湖コタン。
車内は、だいたい“人生の会議室”になる。
息子の彼女のこと。
北海道でこのまま暮らすのかどうか。
仕事と生活のバランス。
景色が雄大だと、話題も自然と大きくなる。不思議なもんや。
帯広から鹿追、然別湖、音更あたりを一日ドライブ。
雪がまだ残る道を走りながら、先日の立ち往生事件を思い出す。今となっては笑い話やけど、あの時は本気で焦った。JAFを呼んで2時間待って、引き上げてもらった頃には真っ暗。
北海道の冬は、笑い話の顔をして、平気で牙をむく。
そして、日勝峠をノーマルタイヤで越えようとした話。今聞いてもヒヤヒヤする。やっぱり北海道の冬はスノータイヤ必須。
これは“経験に学ぶ”というより、“命に学ぶ”やつや。
それでも今日の空は、気前がいい。
くっきり晴れて、雪をかぶった山々が映える。
「綺麗」って言葉が何度も口からこぼれる。帯広特有の、どこまでもまっすぐな道。あれは反則や。走ってるだけで、気持ちのノイズが減っていく。
途中、丹頂鶴の群れを見つけた。
釧路のイメージだったから、思わず声が出る。
「おぉ……マジでおるやん」
こういう偶然があるから、ドライブはやめられない。
ドライブといえば、結局は食べ物の話になる。
十勝川西産の長芋を「十勝川の西産って何やねん」と笑い、飲み放題・食べ放題の居酒屋談義、寿司屋行けてないなあという反省会。
会話のほとんどが食べ物だった気がする。
でも、それでええ。旅行の計画より、胃袋の計画のほうが現場では正しい。
彼女とご飯に行くなら、という話もした。
付き合いたての頃は見栄を張って奢ってた。でも結婚となると生活設計が大事になる。
ロマンの話をしていたはずが、最後はちゃんと現実に着地する。
この“着地の仕方”が、いかにも大人で、ちょっと面白い。
自然と人生の話にもなる。
野球選手のメジャー挑戦。年俸が10倍になる夢。でも日本に残る選択肢もある。
結局は本人の人生で、周りがとやかく言うことじゃない。
その結論が、今日の広い空と妙にしっくりくる。
彼女の職場の人間関係の話も聞いた。
院長に気に入られてるかどうかで扱いが変わる。どこにでもある話やけど、しんどいよな。
そんな話を聞きながら、自分たちのいる場所のありがたさを思う。
旅は外の景色を見る時間でもあるけど、内側の“当たり前”を点検する時間でもある。
途中、菅原ダチョウ牧場にも寄る。

ダチョウ牧場を経営したい息子にとっては、気になる場所らしい。
「ダチョウ」と具体的に言える夢は強い。
“いつか何かしたい”より、ずっと前に進んでいる。
12時半、然別湖コタンに到着。
アイスバー、氷の彫刻。冬の透明感。
写真では“綺麗”で終わるけど、現地は違う。冷たさが、そのまま説得力になる。

ランチはカフェでビーフシチューとカフェオレ。
ベーグルかライスで悩んで、結局ベーグル。
こういうどうでもいい選択が、あとで一番残る。「あの時ベーグルやったな」みたいな記憶が、旅の芯になる。
氷上露天温泉のタオルを買って、温泉へ。
が、女性観光客が水着で入っているのを見て、遠慮してしまう。
係員さんに聞くと、水着着用のルールはない。混浴なのでタオルで隠せばOKとのこと。
理屈は分かる。でも、気持ちは別。
あと一歩が出ないのも、自分らしさかもしれん。
「うーん……これは次回の宿題やな」
旅の宿題は、だいたい“勇気”の科目や。
13時40分、扇ヶ原展望台。
夏しか知らなかった景色が、冬では別の顔を見せる。
季節が変わるだけで、同じ場所が“別の土地”になる。これは何回行っても飽きない。
15時、音更昭和商学校へ。
廃校をビジネス用に活用している施設で、施設長の山城さんが案内してくれる。小樽商科大学のサテライトオフィスもあるらしい。
こういう場所を見ると、旅の視点が少し“仕事モード”に切り替わる。
それもまた、自分の一部や。
15時50分、理髪館ブルーに戻り、車を停めさせてもらう。
部屋に戻って16時から17時まで請求書作成と送信。
絶景のあとに請求書。
落差がすごい。
でも、この落差があるからいい。
現実があるから、絶景は逃避にならない。ちゃんと栄養になる。
冷凍していたおこわおにぎりを2個。次男は出かける。
夜は、今回初めてのスーパー「ダイイチ」。
甘えび丼、イカづくし寿司、ビール。部屋でひとり晩酌。
関空引き返しから今日までの旅を、静かに振り返る。
派手なイベントがなくてもいい。
景色と会話と、混浴の宿題と、請求書と、甘えび丼。
絶景も、現実も、全部同じ車内に積み込んで走っている。
それが、今の北海道の形なんやと思う。
旅の一日は、誰かの一日と重なりながら、静かに終わっていく。
ほな、また明日。

